ヒビ【藍良と天城兄弟】あん☆





 
「ヒーロくん!みてみて!」
藍良が嬉しそうに自分のスマホの画面を見せてきた。画面を見ると、どうやらチャキというものだろう、前に藍良から教わった理実際見せてもらったことがあるので形に覚えがある。そのチェキに映っていたのは、顔をハートのスタンプで大きく隠された女性と……兄さんだ。
「藍良、これ……」
「ふふ……!めっずらしいでしょ!これ、多分CrazyBを結成する前の……ほんとアイドルになったばかりの頃でしょ!現場で知り合ったお取引の人がみせてくれたんだー!」
現場やお取引というので、何か個人の仕事でなのかなと思いつつも、画面をじっと見つめてしまう。まだ慣れないのか笑顔が少し下手で、今より輝きがないもののなんというか、その不慣れさに懐かしさがこみ上げてくる。
「おれこれみてね、出会った頃のヒロくんに似てるって思った。どういう顔をしてチェキをしたらいいかとか、ファンが何を求めているか分かってない感じ。異世界に必死に慣れようとしてるみたいな」
「……僕はそんな感じだったかい?自分じゃ分からないけど」
「そうだよね、おれも今だから少し分かってきたのかもしれない。ALKALOIDとして活動する以前は見えてなかったものを沢山みてきたからさ、あー最初はこうなるよなあって」
うんうんと藍良は自分で相槌している。
だが僕も同じようにたくさんのことを知って考えが変わった。アイドルとは何かを沢山考えてきた。
「あっれー?弟くんとその彼女?」
大きな紙袋を抱えた燐音が後ろから声をかけてきた。僕は気配で分かったが藍良はびっくりしたようで身体が跳ねた。
「か、彼女じゃないですー!っんととーー」
藍良は慌てて見せてくれたスマホをササッと背中に回して隠そうとしたが、その瞬間カツーン!と嫌な音がした。
「あああああ!?!?」
藍良は大きな声を出して落としたスマホをすぐに拾い上げたが、画面はさっきのままだが画面にヒビが入った。
「あっちゃーやっちゃったねえ……ってこれどこで見つけてきたわけ」
涙目になっている藍良から燐音はサッとひび割れたスマホを取り上げた。
「あ!返してください!」
「んーーまー過去のオレっちの写真を眺めるのは構わないんだけど、オレのせいでひび割れしちゃったんだし、この画像消してくれたら新しいスマホを買ってもいいけど?ちょうどパチンコで大勝利したからそれくらいなら払える」
「え!あーーうーん……」
と藍良は悩みだした。僕はつんつんと兄さんの袖を引っ張った。
「なんだい?弟くん」
「兄さんもやっぱりああいうのは恥ずかしい?」
「ーー!!……んにゃ、そういうわけじゃないが……」
ああ少し照れているなと一彩は嬉しくて思わずニヤけた。
 




20210518





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