夜を忘れないために【大人照吹】



※付き合って一時同棲してる








白い大きな花束を持って帰ってきた彼は少し疲れている様子だった。僕はオフの日だったので家事をしてゆっくり寛いでいた。
「ただいま」
「おかえりー大変だったねえ。でも誕生日に試合勝てて良かったね」
「ん、ああそうだね……」
返事もおざなりだなあと思っていると彼は荷物を置いてソファーに座っている僕へ身体を傾けてきた。猫みたいにすり寄る彼を僕は優しく頭を撫でた。
普段ならお風呂に入ってない時はあまり触れさせてくれないし、まして自分から甘えてくるなんて珍しい。よっぽど疲れたのかもしれない。
「おつかれさま。そして誕生日おめでとう」
「朝も言ってくれたねそれ……また言うのかい」
僕はフフッと笑うと彼の頭も振動で揺れる。
「何度でも言うさ。君が生まれた日をいつだって何度も祝いたい。それは嬉しいことだから。君に会えることと同じくらい嬉しいからね」
「……そうか、ありがとう」
彼は顔を上げて僕の頬にキスをした。お礼だよとまたもたれかかる。耳が赤いので照れ隠しだと思って心がふよふよと浮かびそうだ。僕がにやけていると彼はすまないと呟いた。
「今日一緒に居られなくて、明日から北海道に戻るのに」
「え、ううん?!お互いのチームがあるのに、短期間の同棲生活楽しかったよ?それに……君と朝一緒に目覚めて夜は一緒に寝ることができる。それが幸せだし、今日の試合の君の活躍見たらさ……本当に悔しいんだ」
彼は顔を上げた。
「やっぱ君はすごいよ。あそこで新しい必殺技を出してくるなんて、思わなかった」
「フフッ……そうかい?まあ、教えてなかったからね。悔しいと思ってくれて有り難いよ」
二人で笑っていると、彼の唇がそっと近付いて触れてそれから抱きしめられた。
「ーー本当は誕生日を一緒に過ごしたかったな。大好きな君と」
抱きしめている腕の力が強くなった。僕も同じようにギュッと抱きしめた。
「大好きだっていってくれただけで僕は嬉しいよ、またこうして過ごせるよきっと……同じ気持ちなら」
明日の夜には隣にはいない。僕は彼の身体の熱も感覚も匂いも気持ちも忘れないようにと自分に刻むように強く抱きしめた。
明日から一人でも夜を過ごせるように。




20210517





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