勘違い【ひいあい】あん☆



※付き合ってない



一瞬抱きしめられた身体がむず痒くて、でもとても熱くていつまでもこうしていられたら、なんて考えているうちに腕はゆっくりと離れていき彼は前を向いて良い表情のままステージ奥まで届くように叫んだ。
「みんな!ありがとう!まだまだ楽しもう!!」
ファンからの歓声と共に次の曲のイントロが流れ出した。ステージ上の画面に大きなハートが映り、おれも慌てて位置についた。

ーー抱き締めるなんて、今までもあっただろうにああどうしてこんなにも胸がざわついて仕方ないのだろう。
きっと一彩はスポーツマンが試合中に感情の高まりからくるスキンシップみたいなものかもしれない。アイドルだって、そういったファンサービスをすることもある。自分がその対象になるとは考えていなかったけれど。
悶々考えていると、間奏中にポンと肩を叩かれて一彩が前を指差した。
「藍良、あそこ」
指差す方をみると、うちわにおれの写真と口癖の文字が貼られておりパチッと目が合うとキャーと聞こえてきた。隣はヒロくん推しのようでうちわに《抱きしめて!》と書いてあった。
まさかまさか、ヒロくん……。
「抱きしめてっておれじゃなくてあの子をってことだよ!前に教えたじゃん」
「ウム。しかし、ここじゃそれが難しいだろう?だから藍良を抱き締めたんだが……」
あーーもう!!バカ!!それじゃあ感情の高まりじゃないってこと!?もう!!!!
今すぐにもそう言いたいが間奏が終わってしまう。ライブ中にあまり話しすぎてはいけない。
「ヒロくん!ちょっと!!」
一彩の腕を引っ張って耳打ちをして間奏が終わる直前にうちわの方に向かって二人でハートを手で作った。
声には出さないで『あいらーぶ!』と二人で口パクすると先程より大きな悲鳴が聞こえた。
「次抱き締めたら怒るからね!」
と、一彩にぼそりというと何故だ?という顔を浮かべていた。
そんなの言わないからね!と藍良は無視した。




20210507




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