離すから嫌【ひいあい】あん☆



※付き合っている



「ヒロくん」
と呼び止めて周りを確認してそっと一彩の手を繋ぐと、一彩はため息をついた。繋いだ手は恋人繋ぎに直された。
「なんでため息つくの?イヤなら離すからちょっとだけ……」
「いや藍良が嫌なんだろう?手を繋ぐのを見られるのは。だから人が来るとすぐ離す」
むくれた一彩を可愛いなあとニヤけてしまったが、でもやっぱりまだ。
「だってぇ……恥ずかしいじゃん……てかつ、付き合ってるとかバレたらヤバいんだからね!!」
ぎゅうと肩に寄りかかって見上げると、一彩はフムと考えている。本当に分かっているのかなあと思いながらも見つめているとピタリと足を止まった。
バタバタと近くにいた鳥が飛ぶ音が聞こえてきた。みると、向こう側から中学生らしい子たちが歩いてきている。
「ひ、ヒロくん!手をはな、離して……!」
小声で訴えて一彩の傍から離れようとするが、がっちりと掴まれたままで全く離す気配がない。
楽しそうに話す声が足音と共に近くなっていき、だんだんと顔が赤くなっていく。どうしようと焦る気持ちと恥ずかしい気持ちにパニックになりそうだ。
手を繋いで歩いてるのを見られて、もし新人アイドルだけどおれとヒロくんだと知られたらーーああもう!!ヒロくんのバカ!!
と、一彩はグンと手を引っ張って走り出した。
「わわ!?ひ、ヒロくん!?」
「打ち合わせに遅れてしまうから急ごう!」
なに急に!?というか今日はそんな予定あったっけ?!と混乱しながらも一緒に走っているが、一彩の方が足が速いのですぐに息が上がってしまう。
「も、ま、待って……」
藍良が限界きて足を止めると、一彩がようやく足を止めて振り返った。ゼイゼイと息が整うまで一彩は待ってくれた。
「誰も僕たちなんてそんなに見てないよ、今はステージの上ではないんだしさ」
すると、一彩が繋いだ手を上に挙げた。ビックリして周りをちらっとみるが幸い誰もいなかったのでホッとして一彩の顔をみると見るからに不機嫌そうだ。
「手を離したいかい?僕は藍良が手を繋ぎたいというから繋いだのに、すぐに離すから嫌になる。繋いだ方が藍良のことを感じられるのに」
「ーーーー!!そ、そういうところほんとズルい……」
藍良は腕を下げて少し汗ばんだ手のひらを感じつつも手に力がこもった。耳の先まで真っ赤になる藍良の頭を撫でながらようやく繋いだ手を離してくれた。
帰ろうかと言われて黙ってコクンと頷いた。隣を並んで歩きながらさっきまで繋いだ手が少し寂しく感じた。





20210506





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