日陰の後押し【蘭拓】



 



「ここまできて諦めるとかないよな?」
揺れ動く瞳を神童はしっかり捉えてる。逃げられない、袋小路だ。狭い道を塞いで神童の顔の横に手をついて行かせないようにしているのはオレなのだが。
少しでも動いたら触れそうな位置にある唇が濃厚な香りを放つ花のようにオレを誘ってくる。今すぐにでもその匂いや味を噛み締めたくて唾が出てしまう。ああ、なんでこんなにも煽ってきてしまうのだ神童。
「……こんななし崩し的にしてもいいのか?お前は」
ふと耳の先をちょんと触ると神童の肩が縮こまった。その反応がドキドキと鼓動が早くなって神童のフーッとゆっくり吐き出す息もどうしようかと自分の可か否かの旗が上下に激しく動いていく。
「い、いいんだ……霧野なら……霧野がいい」
揺れてた気持ちは振り切られた。きっと後悔はしない。太陽も見えないこんな暗がりの路地裏で熱がこもった顔に触れて、ようやくお前とキスができた。




20210505




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