同じ夢は見れない【蘭拓】




※中3設定、付き合ってない



真っ白な進路希望調査の紙を眺めている霧野に、オレがどこの高校に進むか決まってないのかと訊いたら、まあなとため息と共に返された。
「お前と一緒の高校だったら良かったけどな……」
オレが進むのは全寮制の名門校だ。推薦で受けるつもりで家族とも話している。
「オレも霧野と一緒が良かったのだが、親の勧めやそこでやりたいことがあったからな」
「やりたいこと?」
霧野が顔を上げてオレの顔をじっと見た。整った顔立ちは、見慣れているとはいえ年々綺麗だなと感じている。一番綺麗だと思うのは同じフィールドに立って試合をして終わったときだ。眩しく光るような汗が霧野の顔を流れてた時、ドキリとすることもある。
「サッカー部がそこにはないそうだから、円堂さんのように設立したいし学園内のこともいろいろとな……。本当は霧野にいてほしいが」
「お前の行くところは学力がめちゃくちゃ高いしお金がないと入れないからな……凡人のオレはまず無理だな」
はあとまたため息をついている。オレが霧野は凡人じゃ……と言いかけると、手で静止され首を横に振った。
「オレは神童のようにやりたいことが明確じゃないんだ。ただお前の傍で力になりたいだけ。そんなのお前頼りすぎるからな」
「ーーそ、それでもいいじゃないか……」
先程まで聞こえていた廊下からザワザワとした声と足音が一気に静まり返った気がした。感じるのは自分のどこからか湧き上がってくる熱。熱は顔を赤く染めるかと思えば、霧野がフフッと笑った。
「そうだよな、それでもいいかもしれないけれど。オレはそれじゃ駄目なんだ」
ザワザワとした話し声に足音、遠くから金管楽器や弦楽器の混ざりあった響き、それらよりも目の前にいる霧野の声がものすごく遠い。
どうしてだ、どうして“駄目”だなんていうんだ。
「これは家でもう少し考えるよ、それじゃあ帰ろうか」
「あ、ああ……」
赤く染めた熱はどこへいったのだろうか。霧野には届かずに教室の床へと落ちたのかもしれない。
前をいく霧野の隣へ駆け寄るのが少し躊躇った。





20210503




prev next








×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -