誤解【狩屋+基緑】





「そういえば、ヒロトさんって彼女いたんですね。オレ知らなかったです」
マサキにそう言われて、持っていたタブレットをガンと落下させて足の甲に当たった。イテテと思いながらもケースに入れていたからかタブレットが無事でよかった。
「えっ、あっ……まさか緑川さん知らなかったんですか!?秘書なのに!?」
「い、いや秘書でも全てを知っているわけじゃ……あーいや、彼女ね。知ってるよ」
一瞬驚いたが心当たりはある。仕事関係で若い女性とのやりとりがあって、オレの知らないところでそう捉えて誤解するようなこともあるだろう。
自分にいいきかせているが、バクバクと心臓の音がよく響く。
「ーーというかそれ誰から訊いたの?」
「え?ヒロトさん本人からですけど……オレが『財閥の社長だから許嫁とか彼女とかいるんですよね?』ってきいたら『許嫁はいないけれど、一生添い遂げるつもりの人はいるよ』と言ってましたよ。正直に答えるとは思ってなかったんですけど……ーーって緑川さん大丈夫ですか?」
クラクラとしそうになり思わずしゃがんでしまった。
「だ、大丈夫……さっきの落下のせいでちょっと足を痛めて……。そ、そうなんだ……」
マサキは心配そうに緑川の顔を覗き込んだ。ああダメだダメだと顔を振って気を引き締めた。添い遂げる人がいる、つまりいつかは結婚するということだ。
そういう大事な話を何故オレにしないのだ?というか子どもにそういう話をするか?
「マサキ、この話はあんまり人に話さないでね。会社に関わってくるから」
「ヒロトさんにもそう言われました」
なら話すなよーーーー!と叫びたくなる衝動を抑えて、マサキと別れてヒロトのところに早足で向かった。
「全くもう!どこでそんな彼女作る時間あったんだ!」
この数十分後に、大きな声で笑うヒロトの声がお日さま園に響き合わった。



20210501




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