もう一口だけ!【奏純】ド!



 
ジリジリと迫ってくる奏の顔がマジの顔である。そこまで広くない部屋の隅と対角線上の隅に睨み合いながら、なんとしてでも死守しなければと手に力が入った。
「純哉くん」
「……ダメだからな!何時だと思ってる?!明日の仕事分かってるだろ!」
純哉が必死に訴えるが奏の目は純哉が手に持っているものに釘付けだった。隙間から漏れるいい匂いに自分さえもお腹が鳴りそうだ。でも今日はもう食べてはいけない。これ以上食べたら確実に肌に影響するし、明日の仕事だって困るかもしれない。明日はバラエティー番組の撮影で観客も入り予定では肌を露出するシーンもあるのだ。
「あーもう!明日の夜に食べればいいだろ!美味しいのはわかったから!」
あと数メートルまできた奏の顔を手のひらで止めた。純哉だって奏がこんなに食べたいと願うほどの料理を作れたことは嬉しいし、張り切りすぎて量を多めに作ってしまったのは自分の落ち度だと思ってる。だからこそ、奏のために……と言おうとした時に純哉の指をパクっと食べられた。
「!?はっ!?おま、」
純哉が離れようとするが奏は犬の甘噛みのように純哉の指をあむあむと噛んでいる。爪の先を舐めてから口に含んで指先から手の甲へと向かって噛んでいる。純哉はゾクッとして、まずいまずいと思いながらも振り切れない。奏も人差し指に満足したら中指へと、中指に満足したら薬指へといく。
「ーーーーッもう、やめてくれ……奏」
力なく純哉がいうと、奏は純哉の手から手を離した。唾液まみれになってる手を床につけてハアと大きなため息と共にその場に崩れた。
「ごめんね?純哉くん……でも少し満たされたから、それは明日食べるね」
純哉が顔を上げると、申し訳無さそうにしている奏がいた。
「ーーオレが満足できなくなっただろ……」
純哉は顔を真っ赤にしながら頭を掻いた。
 



20210424




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