祈り【大人基緑】




ヒロトが簡易的な仏壇に祈らなくなったのはいつからだろう。緑川は閉じていた目を開けて父さんの写真を眺めた。
父さんが亡くなった原因は実はよくわかっていない。もしかしたら瞳子姉さんやヒロトは知っているかもしれないが、分からないままでもいいと思う。
父さんを憎む人が多く存在することは知っている。吉良自体大きな財団だし、仕方ないことだ。ヒロトも父さんのしてきたことを継いで社長となり、オレもその秘書となりいろいろみてきた。
「緑川、ご飯できたよ」
リビングからいい匂いとともにヒロトが部屋のドアを開けた。
「うーん美味しそうな匂い!今いくよ」
緑川は部屋の照明を消した。
パタパタとスリッパを音を出して歩きながら、いつかはオレも祈らないことがあるのだろうかと考えてしまう。
「緑川?」
ハッと気づくとヒロトの袖を掴んでいた。緑川はすぐにパッと離した。
「……ご、ごめん」
「いいんだけど、なにかあった?」
「いやちょっと気になったことがあったけど……忘れちゃった!早くご飯食べようよ」
緑川は明るく笑いヒロトの手を引っ張った。




20210422




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