ゆっくりと【照吹】



神様というものはどうしているのだろうか。
僕が一番神様に願ったのは大切な家族を奪わないでということだ。あの日あの時、願う前に真っ白な雪は真っ暗な闇を僕に与えて願いよりただの終わったことへの訴えだった。
「アフロディくんは、神様なんて巷では言われているけれど自分でもそう思ってる?」
病室に入る風はゆっくりとアフロディの髪をなびかせる。僕は重力に伴ってさらさらと落ちる綺麗な髪の毛を見つめた。彼は横髪を耳にかけて微笑んだ。
「僕が自分が神様だというのなら、君は信じるかい?それとも今の現状に対して文句をいうかい?」
考えていることがお見通しなんだなあと僕はクスクスと笑った。
「信じていないよ、僕らのチームは君のチームに勝ったんだから」
僕は残念ながら怪我をして世界大会へは一度離脱になってしまったが、怪我の理由は別に気にしていない。
「それを言われると少しムカつくね。僕らだって未だに悔しいさ、後悔はなくても。ーー神様か、僕は神様かどうかは分からないけれど、神様を愛したいよ」
「愛したい?」
どういうことだと首を傾げると、アフロディはそうだなあと窓の外を見つめた。
「神様にだって、自分の願いがあると思うんだ。ずっと他人の願いをきいてきているのだから、そういった気持ちが湧いてもおかしくはない。神様じゃない人が出来る事はそんな神様を愛し寄り添うことかなと」
「……なんだか宗教みたい」
吹雪が呟くとそうだねと頷いた。
彼もきっと神様だと周りから言われて気付いたことかもしれない。そう思ったらアフロディの笑顔がやけに寂しく見えた。
「アフロディくん、僕はね何も文句は言わないよ。ただ愛して寄り添うもなかなか難しいことだからゆっくりと春の日差しのように暖かくなればいいなって……」
彼の後ろの壁は日光によって白と黒に分けられている。彼も同じように半分影ができて黒くなっている。
僕の言葉に先程までの彼の笑顔から少し変わった。
「ありがとう、また来るよ」
まだ少し寂しい匂いのする声がお礼を言った。





20210421




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