ウインク!【ひいあい】あん☆



「この曲はここで一彩さんがウインクをするのですが……」
とマヨさんが言ったのが始まりだった。
 
「ずーーっと練習してるよねヒロくん。少しは休んだ方が……」
「いや、次のライブの時には成功させたいし、さっき通りすがった薫先輩にウインクのコツを教えてもらったしね。もうそろそろ上手くできそうな気がするんだ」
一彩は再び鏡に向かってウインクの練習をする。一応出来てはいるが、正直不格好なのだ。どうしてもウインクしていないまぶたの方も下がってしまう。
「薫先輩ってUNDEADの羽風薫!?!?い、いつの間に知り合ったの?えーーそんな2枚看板のウインクを教えてもらうなんてヒロくんのくせにズルーーい!!」
ぶーぶーと一彩の背中を叩いていると振り向き、眉間にシワを寄せた。
「藍良、邪魔しないでほしい」
「ーーッもう!おれは休んでっていってるの!……普段おれの方がうまくいかないこと多くて、そんな時は少し休憩してからの方がうまくいくの!はい!窓の外みるーーってあれ?青い鳥?」 
窓の外のすぐそばに見える木の枝に青い鳥らしき物体が見えた。青い鳥はその場でじっとしていてとても目立っている。藍良がそっとゆっくりと近付こうとすると、一彩はウムと声を出した。
「ヒロくんシーーッ!」
こっちに気付かれたら逃げてしまうかもしれないと人差し指を唇につけて注意したが、一彩は首を傾げた。
「藍良は何か勘違いしているようだが、それはただの青い鳥ではないようだ」
「そ、そりゃあこんなところに街中にいるなんてただの青い鳥じゃないでしょ!ていうか声の声量下げて!」
なにか言いたげだったが、一彩はそのまま黙った。藍良は忍び足でゆっくりと近付いていっても一向に青い鳥は動かなかった。おかしいなと窓の目の前に立ってようやくこの鳥の正体に気付いた。
「これって……絵?」
「ウム。誰かがレッスン室の窓に描いたようだね」
「ようだねって分かっていたなら言ってよ!!ラブーい!って写真撮ろうとしたのに!もう!ああでもこの絵ならSNS映えするかなあ……」
藍良がスマートフォンを取り出して構えると、あははと笑い声が聞こえる。
「えーなんでヒロくん笑ってるの?」
「すまない、藍良の表情が怒ったり驚いたり悩んだりとコロコロ変わるから面白くて」
「全部あんまりいい感情じゃないんですけど、あ!」
藍良はふと青い鳥の絵に向けていたカメラのピントをくるっとひるがえして一彩に向けた。
「はい、ウインク!!」
「!ーーえっあ……!」
一彩は慌ててウインクをした。
「ヒロくんはこのウインクでも十分かっこいいよ!」
藍良は撮った写真をみてそう笑った。 



20210418




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