傷付けたのは君【ひいあい】あん☆





「どうしたんだ!?藍良!その傷は……!?」
ボロボロの状態の藍良は胸を押さえしゃがみ込んでいた。一彩はすぐに藍良の元に駆け寄って地面に倒れそうになっているところを支えた。
「どうして、こんな……」
一彩は辺りを見渡すが外傷を受けるような物や人は見当たらない。一体どうしてこんなに傷付いてボロボロなのだろうか。
「あのね、ヒロくん……おれは……このキズはね……」
胸を押さえつつ、藍良は弱々しい声を出した。喋るのさえ辛そうだった。一彩は急かさずに藍良の言葉を待つ。すると、藍良が一彩の手を掴んだ。
「このキズはヒロくんが付けたんだよ、おれはヒロくんみたく強くないから、弱いからキズだらけになっちゃった」
そういって、藍良はゆっくり目を閉じていった。驚いた一彩が揺すっても目を開けることがなく、背中にヒヤリとした汗を感じた。
 

 

「ーーという夢を見たんだ」
一彩は藍良の背中にピタッとくっついたままぼそぼそと理由を話した。
今日の一彩はずっと藍良にくっついて動くので、オフだしずっと寮にいる予定だからまあいいかとほっといていたが流石に夕方になっても離れなかったので怒ったのだ。
「はーーそれで寂しくなったの?」
「寂しいというより、申し訳なくなったかな。オレのせいで傷だらけになったのがすごくすまなかったんだ」
ギュウと藍良の身体を抱きしめた。まるで子犬みたいで不思議と可愛く見えてしまう。
「……今、傷なんて見えないでしょ。大丈夫だから、ね?」
優しく声をかけると一彩は藍良の身体から手を離した。
「そうだね、でも藍良のことを傷付ける人がいるなら僕は友人のために戦うから」
「うん、ありがとう」
一彩のほっとした顔に痛む胸の内を隠しながら藍良は微笑んだ。





20210417




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