認め(たく)ない【蘭マサ】



※学年1つ上がってます。付き合ってない

 

気づいていても言葉にしたくなくて、どんどん本心から真逆のことを言葉に出してしまう。そしてセンパイはその言葉を鵜呑みしてオレを嫌いのままでいてくれたら良かったのだ。
「かーりや?一人か?」
4月、クラス替えになって仲のいい人たちとはクラスが別れてしまい、しかもマンモス校のために教室が離れていて休み時間や昼休みに話にいく程度もちょっと大変だ。サッカー部の仲間である天馬たちは心配して昼を一緒に食べようと誘ってくれたのだが断った。別に一人でもいいと思ってしまった。本当は一人で食べるご飯は好きじゃないのに。
というわけで、去年見つけた一人で食べるにはここ!という場所で昼飯を食べようと移動していたところ霧野センパイに声をかけられてしまった。
「あーはい。ちょっと昼飯を買いに。センパイはどこに行こうとしてるんですか?」
昼飯は持ってきている。いろいろ訊かれたら面倒だから。
「オレも昼飯を買いに行こうとしたとこだ。母親が寝坊して弁当を作り忘れたらしくてな」
購買部へと霧野はそのまま歩き出し、行った手前付き合うしかなくてとりあえず途中で上手い嘘を思いつくまでついていった。
「ああそういえば今日は神童も昼に用事があるそうでな、一人で飯を食べるんだが狩屋も一緒に食べないか?」
ピクンと反応してしまう。オレがもし犬だったら耳がぴょこんと立って尻尾を振っていたかもしれない。人間でよかったととても安堵した。
「えーセンパイってぼっち飯イヤなんですかー?他に誘える人いるでしょう?」
狩屋がニタニタとした表情を浮かべていると、センパイはムッとした。さっき反応したのは流すことができたかな?と内心ドキドキしている。
「お前なーー……まあいいや。一人で食べるよりはいいだろ?狩屋もそう思うだろ」
急に立ち止まって狩屋の前に出て、手首を掴まれた。
「は?なにすーー」
「部室に行こうとしてるだろ?」
手のひらを開けられて、持っていた部室の鍵がキラリと光った。そしてその鍵を奪って再び歩き出した。
「な、これは違くて……。というか知ってましたよね!?オレが部室の鍵持ってること!!今日の朝練の施錠係オレだって!?」
真っ赤になりながら霧野を追い越して前を塞ぐが、そんなことなんてことないみたいな顔をしている。この人は別にからかうつもりは一切なくただーーー。
そう考えるだけで顔の熱は治まらない。何の熱さかも最早分からなくなってきた。
「センパイなんて嫌いですよ」
睨みつけながらいうと、センパイは頭をポンと叩いた。
「そうか」




20210414




prev next








×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -