魔法のお願い【基緑】



 
「ねえおねがいーーーー!!」
パンと良い音を立てながら緑川は手を顔の前で合わせてオレに頼み込んできた。
「緑川、あのね」
「今日はどーーしても早く帰らなきゃならなくて、なのに今日日直だし担任はクラス委員長決めないと駄目だっていうし、オレがやるという最終手段もあるけどそんな人望ないし」
しょんぼりとした顔をされるとこちらとしても困る。要はオレにクラス委員長をしてくれということだ。
「緑川はジェミニストームのキャプテンしてたじゃないか」
「だってあれはメンバーがみんな家族で友達だけど、学校は違うじゃん!でもカリスマ性があるヒロトならできるでしょ?」
「カリスマ性ねえ……」
ヒロトはコツコツと指で机を叩いた。別に委員長をやるのはいい。だが引き受けてしまうと瞳子姉さんの手伝いが出来なくなることが増えてしまう。父さんが何もできない今、姉さんの負担を少しでも減らしてあげたいのだ。
「ねーーおねがい!なんでもするから!」
でた。緑川の『なんでもする』発言。昔からそういって頼まれることが多くて実際になにかしてもらったことはない。でも、緑川が他の誰かに『なんでもする』といって頼むところを想像したら断ることができない。
きっと本当になんでもする、緑川は。
「……分かった。いいよ、その代わりにーー」
ため息をつきながら答えるとわーい!と緑川は両手を上げて喜んだ。
「緑川、最後まできいてくれ。その代わりに本当になんでもしてくれるんだよね」
「へ?あ、うん!ヒロトの頼みなら!」
曇りきっていないキラキラとした瞳が眩しい。エイリアのことがあってもまたここまで輝いている緑川の瞳は好きだった。
「へえ……オレの頼みなら、ね」
ニコニコしながら緑川をみた。どこまでもオレを喜ばせるのだろうか。
ヒロトはポンポンと緑川の頭を叩いて耳に囁いた。
「じゃあオレ以外にそういった頼み事絶対にしないでね」




20210412




prev next








×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -