目を瞑る【奏純】ド!



※つきあっている



冬の寒さが僅かに手の先から感じられる。スマートフォンの通知が来た。
《もう少しで着くよ!》
ようやく日が辺りを照らして、走ってくる奏の姿が遠くから見えた。あちらはオレの姿を見つけれるや飛び跳ねているかのように走ってくる。
「純哉くん!」
急にバッと手を広げて避けることも出来ずにそのまま抱きつかれた。
「おま、一応外!」
「だってー!こんな朝早くに純哉くんの顔が見れて嬉しいんだもん」
奏は手をおろしてえへへと笑う。そういうところ、むちゃくちゃ可愛いんだよなとニヤけそうになるのを堪えた。早起きした甲斐があったというものだ。
二人で人気の無い道をぶらぶらと歩いていく。付き合ってここ最近一緒の時間を過ごすことが出来ず、それなら早朝に散歩しようよ!と奏が言い出した。仕事もあるから1時間だけ会って人気があまりなさそうな道を歩いてただ話すだけ。純哉はそうだなと頷いた。仕事でももちろん会えるし話せるが、プライベートで会いたい気持ちは純哉も一緒だった。奏からそう言ってもらってから改めて気付いた気持ちだ。
 
「あれ、桜の花びらが落ちてる。この辺に咲いてないよね?」
「んー、あ、あそこの神社の桜じゃないか?」
純哉が指差したのは今の場所より上の位置にある神社だ。目を凝らすとピンク色がちらりとみえた。
「ね、行ってみよ!」
「そうだな」
と純哉がいうと、奏がピューッと走り始めた。
「ま!?奏!?」
驚きつつも純哉も後を追いかけると、奏は振り返りながら競争!と叫んでいる。先程も走ってきたというのに、どれだけ朝から元気なのだろう。

思った以上に階段を駆け上がったので、ゼイゼイと呼吸が乱れながらもやっと奏に追いついた。
奏が桜の木の下にいて駆け寄ろうとした瞬間にブワッと風が真正面から当たっていく。
「うわっ……!」
思わず目を瞑っていると、綺麗という声が聞こえる。
「純哉くんってホント太陽が似合うね!」
桜が舞い踊っているのを背景に奏はオレにはにかんだ表情を向ける。
「……お前こそ、眩しすぎるわ」
純哉は奏の肩や頭にのった桜の花びらを払っていった。


20210409





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