夢中の裏の【ひいあい】あん☆




「今日は付き合ってくれて本当にありがとー!」
帰りの電車に揺られながら藍良は興奮のままお礼を言った。今日は少し遠方の会場でライブがあり、一緒に行こうとしていた人と連絡が取れずもったいないからと一彩をライブに誘ったのだ。一彩は興奮している藍良の話をうんうんと頷きながらきいていた。話の内容というよりライブのことを語る藍良が興味深い。自分も同じことをしているはずなのにこんなにもいきいきとしている。話疲れたのかあと少しでつくというのに、少し眠るから起こしてと頭を一彩の肩に寄せた。
あ、そうだと藍良は落ちそうになっている瞼のまま一彩に呟いた。
「もう、おれの好きなアイドルを滅ぼすなんて言わないでよね」
「ーー!あ……」
一彩がなんて返すか考えているうちに藍良は寝てしまった。向かいに誰も座ってなくてちょうどよく窓ガラスに自分と藍良が映り込んだ。藍良は気持ち良さそうな、如何にも満足した!という寝顔をしている。
「ーー藍良は今日ずっとそれを言いたかったんだろう?だから今日の、あのアイドルのライブに誘ったんだ」
そのアイドルはMC中に本日引退しますという涙ながらに語っていた。学生生活を優先したいからと話していたが、実際のところはそうじゃないらしい。ネットでは引退間近と噂もあったと藍良は言っていた。
いつかは訪れる好きなアイドルとの別れがある。それが明日かもしれないし、来年かもしれない。それを覚悟して好きでいて、推しているのだ。
「僕は今、アイドルだ。だからーー」
言いかけたときに次の駅のアナウンスが入る。次で降りなければと、続きは起きてからにしようと決めた。



20210404





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