繋ぎ止め【奏純】ド!



有名雑誌の好きなアイドルランキングに奏が1位になった。このランキングで1位になるアイドルは次にくるトップアイドルというジンクスがあると世間で言われている。実際に雑誌が発売されてから、奏への注目度は格段に上がって今までの新人アイドルグループの、というよりは《天宮奏》として仕事が増えている。
オレもメンバーも祝福したし、しばらくグループ活動に影響が出るのも仕方ないと話し合った。
「今日は何の仕事だ?」
「今日はねーラジオと収録2つと雑誌の撮影だよー」
たまたま同じ局に向かうために事務所の車で一緒になった。忙しそうなのに全然そんな素振りを見せない。むしろ楽しそうで生き生きとしている。
「……頑張れよ」
「うん!純哉くんも!ーーねえ、今日仕事終わったら純哉くんの家に行っていい?」
キラキラとした瞳で見つめられて車の外に視線を逸らした。
「ん、いいぞ。ケドお前忙しいんだから早く帰って自分の家で身体を休めたら」
ああなんだろうか、この違和感。純哉はつい素っ気なく返してしまった。
「……そう、だよねうん!わかった!じゃあまた今度行くね」
奏はあっさりと諦めた。以前ならもう少し食いついてくるのにとまた違和感と腹の奥に動く気持ち悪い物体があるようななんとも言えないヤツ。
話が途切れているうちにテレビ局に車がついて、奏とはそこで別れた。
純哉は自分の楽屋に向かいながら、この気持ち悪い物体のことを考えた。
嫉妬?羨ましい?そういった類のものか。
楽屋の名前を確認して、他の出演者に挨拶しながら準備のために鏡の前に座る。
違うな、そんなのはよくあるしそれは自分がもっと成長すればいい話だ。
いつの間にかメイクの方が後ろに立ってメイクを始めていく。
変わっていく自分の顔を見ながら、ああ分かったと思って声が出た。
「純哉さん、どうかしましたか?」
なにか間違えたかなとメイクの方は動揺してしまったので慌てて謝罪した。

ーーアイツがオレと違うステージへと、一歩先へ行ったから寂しいんだ。

浮かんできた答えに純哉はしっくりときた。同じペースで歩んできたつもりで、どこかで差をつけられた。それが悔しさよりも寂しいが上回った。
奏は今、どんな気持ちで仕事をしているかオレは今当てることができるだろうか。
寂しいと分かったら、会いたくなってきた。まだモヤモヤしているし、と純哉はスマートフォンで奏へ連絡を入れた。
 
《忙しい中ごめん、今日オレのうちにこいよ。遅くなってもいい。飯作って待ってる》



20210403




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