伝わるのは音だけ【蘭マサ】



※事後!!付き合ってる!!!


幸福な時を過ごした日の朝はきっと目覚めが良いと思っていたが、実際は実に心臓に悪い。
ピピピとベッドのアラームが鳴っている中、隣にはまだ眠っている霧野センパイがいた。オレの腕をギッチリと掴んでいて、アラームを止めようと離そうとしても全然離さない。本当に眠っているのかと疑いたくなったが、まずアラームを止めなくてはと掴まれていない手でアラームを止めることができた。
「センパーイ?起きてますよね?」
ペチッと顔を叩くが綺麗な寝顔は表情を崩さずにスースーと寝息を立てている。こんなに寝起きの悪い人だったとは知らなかったなーと狩屋は霧野の長い髪を持ち上げて、サラサラとそのままシーツに落ちていくのを見守った。出会った頃よりも伸びた長い髪は大体女の子に間違われる。それでも髪を切らない理由は、『狩屋が褒めてくれたからだよ』と言っていたが本当だろうか?
付き合い始めてから以前より周りの目を気にするようになった。オレなんかより……という気持ちが離れない。センパイが幸せならそれでいいのに、オレをどうして選んでくれたんだろう。
「オレを好きになってよかったんですか?」
こんな自分でも直せないほどの天の邪鬼なオレを。最初のうちに嫌いになった方がよかったはずなのに。
起きないセンパイの胸にそっと潜り込む。ドクンドクンと聞こえてくる心臓の音が心地よくてさらに好きになりそうだ。
「早く起きて下さいよ……センパイのバカ」
綺麗な素肌にそっとキスをする。昨日の夜のこと、オレは忘れないんだから。
と急に腕が離れて強い力で抱き締められた。聞こえてくる音が加速していく。これはどちらの音だ。
「ーー馬鹿なのはお前だぞ、狩屋……好きだ」
頭の上から降ってくる愛しい声に一気に顔が熱くなって、ぼやけていた目もカッと開いた。
「な、センパイ起きてーー」
顔を上げようとするが、センパイは抱き締める腕を緩めない。少し息が苦しいくらいだ。
「今起きた。なあお前はさ、どうしたらーー」
その先の言葉が聞き取れない。なんてと聞き返す前に腕が離れて唇を塞がれてしまった。
 




20210402




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