冷たくなる手【蘭拓】




いってらっしゃいと笑顔で送り出せたのだろうか。教室の壁に寄りかかりながら、ため息が出る。相手には申し訳ないが断るつもりだと言われても、神童は優しいからなにかあれば心が傾くかもしれない。前までは告白の断りに付き合っていた。自分がいるだけで心強いとのことだ。
中学3年生になって、それを辞めることにした。理由は同じ高校へ進学しないから。
「霧野が隣にいるのが当たり前じゃなくなるんだと思うと、今から慣れておきたくて」
早すぎないかと肩を揺らしたくなったが出来なかった。オレの隣にも居なくなるのだ。隣を歩く際にたまにオレの左手を掠めて触れる神童の体温もいつかは分からなくなるだろう。
それで良いのか、今の幼馴染で良いのか。
告白の断りに向かった神童の手を今すぐにも取りたい。もうオレに任せてくれと言いたい。
どれだけ考えてもいってらっしゃいといった足は動かなかった。




20210329





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