頼りない罰【蘭マサ】



※霧野高1、狩屋中3設定。付き合っている!

 
久しぶりに会えるぞとドキドキして待っていたのに、待ち受けていたのはめちゃくちゃに怒っていたセンパイだった。
「せ、霧野センパイ?」
高校生になったセンパイは背が伸びたように思う。オレも伸びたはずなのになかなか追い越せない。そしてなんでこんなにも怒っているのだろう。訳が分からずにきっと自分が悪いのだととりあえず謝ることにした。
「え、なんかオレしましたか?すみません」
ペコッと頭を下げると「なーーんにも悪くない!」と怒鳴った。
「じゃあなんで怒っているんですか!謝り損!」
「悪くないけど、でも怒りたくなった!お前なんでオレに言わない?オレはそんなに頼りないか?」
ムッとした顔を近づけられて焦ってしまう。全然話が見えない。そして、人が多い場所で怒鳴られて周りから見られていて恥ずかしすぎる。狩屋は霧野の手を引っ張った。
「なにに怒っているか分かりませんが、目立ちすぎます!オレはいいけど、センパイはその名門校制服着てるしよくないですよ」
人がいなさそうな道に入って手を離した。歩いているうちにセンパイは興奮していた状態から少し冷めたようだ。
「……狩屋はいつも知らないところで気を遣ってくれるよな」
「な、いきなりなんですか!?」
センパイがいきなりに褒めるから顔が真っ赤になる。
「後輩を殴ったんだって?理由はオレのことをバカにしたから」
「あーーきいたんですね。別にセンパイをバカにしたから殴ったわけじゃないですよ」
頭をかいて視線をそらした。転校してきたオレは雷門の周りのことをよく知らなかったが、神童センパイと霧野センパイのコンビは小学校の頃から有名だった。同じ学年でなくても、それは下の代からも憧れ慕われた存在だ。だが今年から入部してきた後輩で霧野センパイをよく思わない奴らがいた。『神童さんの腰巾着でちょっと顔がいいだけだからレギュラーとれた』なんてよく言えるなと思っていたら、手が先に出てた。自分でも驚いた。昔の自分なら同調すらしてたかもしれないし、手を出したらどうなるか考えて止まるはずだ。
ちょうどその場にいたのが後輩しかおらず、オレが勝手にキレて殴ったということだけ顧問に伝えたそうで、少々問題になった。
だが天馬たちはオレを信じて顧問にかけより部活停止には至らなかった。とても有り難かったが、オレは自主的にしばらく部活を休むことにした。
ポンと頭の上にセンパイの手が乗った。
「怒ってくれてありがとうな、だが言って欲しかったぞ」
「だから、センパイのためじゃなくて」
あの時、過去の自分を見ている気持ちになったんだ。センパイのことをよくも知らずにただ陥れたくなって意地悪していたあの頃の自分を殴りたかった。
そんな褒められることじゃない。と、手を掴まれてくるっと回転して背中が塀についたと思えば口を塞がれた。
「んっせ、センパ……」
「大丈夫、誰もいないよ」
「そういうことじゃなくて、なんでいきなり」
唇が離れてもドキドキと鼓動がうるさい。付き合っているとはいえ、こんな路上でキスをしたことない。
「オレを頼ってくれなかったから。頼りないオレも悪いかもしれないけど、だからこれはオレへの罰でもある」
よく見るとオレよりセンパイの方が頬も耳も真っ赤だ。誰もいなくて良かった。オレしかこれは見てほしくない。
「そーですか、じゃあもう一回、今度は目をつむらずにお願いします」
「か、狩屋!」
と小さく怒りながらもゆっくりと唇は合わさった。




20210321




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