音の共有【ひいあい】あん☆



※付き合っているのと一彩に妄想設定があります。

 
「ねえヒロくん、こ、こ、婚約者とか許嫁っているの?」
「急にどうしたんだい?藍良」
一彩は読んでいた本を閉じて、藍良に目を向けた。藍良は目をそらして俯いた。
「いやその、前にバラエティー番組でさ、『罰ゲームは僕とキスしてもらいます!』ってお笑い芸人に言われてヒロくんは『それは出来ないな。キスは結婚相手にするものだろう?』と答えていたからさ……。もしかしたらそういう相手がヒロくんの故郷ならいるのかなって」
一彩は手招きして藍良を自分の足と足の間に座らせる。耳まで赤く染まっていて、かじりつきそうになった。
腰に手を回して身体をくっつけると速度の速い鼓動が伝わってくる。
「いないよ、本当はそういう相手を勝手に周りが決めていたようだけどね。僕はよく知らないからいない」
背中に耳を当てると藍良の鼓動はさらに速くなっていくと思えば、だんだん落ちていく。
「えーーそれってビミョーじゃん……。相手はその気ならさ、ヒロくんは許嫁がいるってことじゃん……」
「藍良?」
先程よりさらに頭を下げてしまい、一彩は覗き込もうとするとぐんっと顔を上げた。
「わっ!?びっくりした」
「それでも、それでもさ…………おれはヒロくんのこと好きだから。それは忘れないでよ」
自分の胸の辺りでギュッと握りしめ、声が小さくなりながらも精一杯伝えてくれた姿がなんて愛らしいのだろう。自分でさえもよく知らず認識してない他人への対抗心。藍良の心臓の音が触れなくても伝わってくる。僕の心臓の音も抑え込まずに聴こえてくれたら少し嬉しいかもしれない。高鳴った音は共有したい。
 
「忘れないよ、藍良も忘れないでね」
もう一度抱き寄せて囁いた。
「僕も君が好きだってこと」




20210320




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