答えは花の名前【蘭マサ】




「そこ、 間違えてるぞ」
トントンとセンパイが解答を書いた欄をペンで示した。オレは設問を読み直しても分からなかった。
「……どこを間違っているんですか?」
「これってこの作者がいう説の論拠となる一文だろ。そういうのは《よって〜》とか《そして〜》とか接続語に注意すれば分かるよ。長い文章だと読みながらマークつけていくとあとで困らないぞ」
センパイはオレの問題集に書き込んでいく。そういえば、この人は神童センパイと同じ高校を受けるといっていた。確かとても頭が良くないと受からない高校だ。
「センパイって、ちゃんと考えて勉強してたんですね」
オレがぼそりと呟くと、手が止まりは?という低い声と共に思いっきり 睨まれた。
「馬鹿にしているのか?これでも来月から受験生なんだが」
「あーー……そうでした。そんな睨まないでくださいよ」
そういってもセンパイは納得してないようでずいずいと顔を近づけてくる。女の子に間違われるような綺麗な顔が迫ってくるとさすがに顔が熱くなってしまう。
「ちょ……センパーー」
このまま唇が奪われてしまうと両手で防ごうとするが、その手を片手で止められてしまい、あとはただ目を瞑るしかなかった。
……なにもされてない?
目を開けると、センパイは先程と同じで椅子に座っていた。
「あのセンパイ、」
オレが口を開くと同時にセンパイも口を開いた。
「ーーオレはただお前が勉強を教えて欲しいというから、ちゃんと勉強してきただけだ」
そっぽを向いてそう言うセンパイの耳をみると少し赤い。こういうところをみてしまうと、胸に宿る花はご機嫌に揺れてしまう。センパイの想いがもし自分のこの花と同じ名前だったら、それだったら良かったのにな。ふと、手元にあった設問が目に止まった。
「センパイ」
甘ったるい声を出してセンパイに話しかけた。
「……なんだ」
「センパイのおかげで次の問いも分かりそうでありがとうございます!」
「どういうことだ」
不思議そうに問題集を覗き込んできたが、どの問題のことなのか分からなかったようで首をかしげている。
分からないでしょうね、まだセンパイには。
「あと5分あれば分かるかもしれないので、待っていてください」
「なんだそれ」
そう笑いながら、センパイはオレが解くのを待っていてくれた。



20210315




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