呪う【勇圭】ド!





 
悪夢をみた。隣にいたアイツがいない。遠く光に満ち溢れた場所で声高らかに歌う姿を画面越しにみていた。
オレもああなりたい。
夢の中の自分はそう願うだけで心が苦しくなった。
あの光を追いかける?一人で?
オレには何があるのだろうと涙が出そうになって目覚めたのだ。

「お前、なにじっとみているんだ」
勇人ソロでの撮影が終わり、次は二人での撮影だ。セッテイングに少しかかるらしく休憩となった。
「オレはさ、お前より自分がアイドルらしいって思っているんだ」
「……そうかよ」
勇人の少し拗ねた様子に慌てて訂正した。
「あ、今のお前がアイドルらしくないとかでなく……。今日みた夢で勇人は本当にすごいアイドルなんだと思って自分がしょぼく思えてしまってさ……正直悔しかった」
持っていたドリンクをテーブルに置いた。バタバタとスタッフの走る音や話し声が不思議と遠くにきこえてくる。
「悔しい?」
「ああ、勇人のようになりたいと走るのは嫌で、んん、なんというか、一緒に目指すのが好きなんだ。勇人の隣で走り輝きたいなと。前も後ろも嫌で隣にいてほしいなって」
圭吾がそういうと、スタッフからそろそろ撮影再開しますー!と声がかかった。
「ーーお前さ」
「ん?ほら、勇人いくぞ」
勇人は舌打ちをして、先にいく圭吾に続いてカメラの前に立った。今回は天使と悪魔のような衣装の撮影だ。
「圭吾」
「なんだい、勇人」
背中を合わせ越しにぼそぼそと二人にしか聞こえないくらいの小声で話す。
「呪ってでも傍にいるからな」
勇人はそういって、圭吾を睨み付けた。シャッター音と共にいいねえとカメラマンが嬉しそうな声を出した。
「ーー本当にそうして欲しいよ」
圭吾も負けじと睨み返したのだった。




20210314




prev next








×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -