良かったね【風宮】




「うーんどれしようかなー」
シューズを見比べて宮坂は唸っている。隣で帽子を被りサングラスをかけている風丸さんがまだかなと肩から覗き込んだ。
「わ!?びっくりした」
「あ、すまん。その……決まったか?」
風丸が申し訳なさそうに遠慮がちにいうと、いつもは格好いいのにこういうところは可愛いなと宮坂は思ってしまう。
よし!と宮坂は1つのシューズを手に取り、風丸の前に差し出した。
「これにします!オレと同じモデルのやつ!」
風丸は手にとってふむふむとシューズを見る。そして、会計へと向かった。宮坂は慌てて後を追いかける。
「理由、訊かないんですか?」
会計が終わってから宮坂は恐る恐るきいた。
風丸さんから自分のシューズを宮坂に決めてほしいと言われた。サッカーと陸上じゃ用途はほぼ一緒だろうが、細かなところが違うはずだ。なのにオレに決めてほしいとは、走りに強いシューズがいいということだ。と思っていたが、だんだん欲が出て結局総合的にもいいはず!と自分と同じシューズにしたのだ。
特に履かずに決めちゃっていいのかな、それなりに高いはずだろうにと会計中も落ち着かなかった。
店を出て隣を歩きながら、風丸さんはフフッと微笑んだ。
「お前と同じシューズが理由なんだろ」
「え、まあ……それも理由ですが……」
風丸は突然立ち止まって宮坂に被っていた帽子を被せた。
「わわっ?!風丸さん!?」
「理由はそれだけで十分だろ。お前が選んでくれたお前と同じシューズで勝利へ向かって駆け抜ける。フィールドが違っても宮坂のことを思い出して走れるだろ」
帽子のつばを上げると、少し赤くなりながらいう風丸さんがいた。赤くなった自分を見せたくなくて帽子を被せるなんて、本当に。
「風丸さんは素敵ですね!」
満面の笑みでいうと、ますます照れていく。 可愛いというより素敵といった方がきっとこの場合は良いんだろうな。
宮坂は嬉しそうに歩き出した。



20210308





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