一緒がいい【蘭マサ】



卒業式の予行練習が始まった。こんなにも時間をかけてやらないといけないものなのかと怠さで眠りそうになる。ただ前の人に合わせて歩いて、椅子に座るだけ。退屈しすぎる。
卒業生は大変だなあと、目の前を歩いていく三年生をボーッとみていた。来年は霧野センパイもあの卒業証書を受け取りに階段を上がっていくのだろう。今は部活で会えるし、口うるさいセンパイがいなくなれば、少しはいいのかもしれない。
ーーそんなわけはないとコツンとそんな心に紙玉を投げている自分がいた。

今日の午後は予行練習で授業が終わり、部活の時間だ。日直で遅くなって、一人部室へ向かう途中でよく知っているお下げのツインテールが目に止まった。
「センパイ」
声をかけると、センパイは少し慌てた顔をしたがすぐに元に戻った。
「ああ、狩屋か。今から部室か」
「そうですけど、センパイは?」
「オレは先生に呼び出されてな、進路のことでちょっと」
進路という単語がズキッと刺さる。来月には3年生でそりゃもう考えていかねばならないのかもしれないが、でも……。
「ーーセンパイはどこの学校へ行くんですか」
「えっ、いやまだ具体的には」
目を逸らしてセンパイは答える。嫌だな、センパイがすぐ近くにいないのは。
「オレも同じ学校がいいです。来年も再来年も同じポジションでサッカーしたい」
俯いてぼそぼそと言葉が漏れていく。自分が言ったことにハッとして真っ赤になりながら顔を上げると、センパイも顔を赤くしていた。
「そうか……それは嬉しいな」
馬鹿にするでもなく嬉しいと言ってくれた。狩屋はじゃあ先にいきます!と部室へ走っていく。
全速力で走らないと赤みが引かない顔は誤魔化せないだろう。




20210228




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