みせたい【奏純】ド!



全部全部をオレのものにしたくて、見せつけてやりたくて首筋に痕を残して困らせてやりたくて、それが出来ないから足首に痕を残した。
「純哉くんはどうしてここに拘るの?」
奏は足首の痕を触りながら、純哉に尋ねた。純哉は仕方ないなという顔をして、唇に人差し指を添える。
「ナイショ」
「えーーケチー!」
でもそういうポーズは本当に格好いいやと奏はバタンとロッカーの扉を閉めた。また髪が伸びたなと純哉はちらりと目を向ける。
率直に奏はオレのことを格好いいと褒めてくれる。もちろんそれは嬉しい。しかし、オレはお前より格好いいと言えるのかと不安になることもある。淫らな格好で唇を重ねて汗が張り付いた身体を撫でられて、知らない声が出る。すぐ目の前にいる息が乱れた奏は、格好いいなとため息が出てしまいそうに何度もなった。
男からみてもお前は格好いい。そう素直に言いたいが、プライドが邪魔して言えない。
「純哉くん、あれまだ着替え終わらない?そろそろ次のお仕事にいかないと……」
「ーーああワリィ。先行っていていいぞ」
純哉がいうと、奏はそう?と荷物をもって更衣室を出た。
純哉は昨日の夜の興奮の間に紛れた想いがずっと心の隅にこびりついて、先程から疼いている。
「……やっぱオレだけのものしたいな」
格好いいと何万回も言ったらオレのものになるだろうか。例えなったとしても、今度はーーオレが格好いいと奏から言われないだろうな。
ふと、ロッカーの扉にある鏡に映った自分の首筋をなぞった。オレが何度もいってあるから、奏は痕を残さないようにしている。
奏はオレが大切にしているものを絶対に傷付けることはないだろう。本当に……格好いいヤツだ。
純哉は少しだけなぞった首筋に爪を立てた。




20210227




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