匂いが幸せ【大人照吹】



※同棲してる!付き合ってる!


「あーいい匂い」
手の先が凍るんじゃないかと思うくらい冷たくなった手を擦りながら、リビングの扉を開けたら微かに香っていた匂いがさらに強くなった。
「ああ、おかえり。外、寒かったでしょう?」
「うん寒いよー。照美くんご飯作っててくれてありがとうね」
荷物を置いてパタパタと手を洗いに吹雪は小走りになる。鼻歌交じりに泡立てて指の先を洗い、手を拭いて戻ってくるとコポコポと良い音を立ててワイングラスに黄色混じった白ワインが注がれた。
「照美くんも飲むの?」
「少しだけね、吹雪くんも飲むでしょ」
照美の向かいに座ってホワイトソースと赤や緑などの彩りの良い野菜のスープを目の前にしてついよだれが出そうになる。
「じゃあ、今日もお疲れさま」
「お疲れさまー!」
コツンとワイングラスを当てて、ゴクンと飲むと口当たりが良い。練習帰りに付き合いで飲んできていたものの、まだ飲めそうだと思うくらいだ。
「帰ったときにね、このスープの匂いがすごく嬉しかった」
銀のスプーンでゆっくりと掬うと小さく角切りされた人参がこちらを向いていた。口に含むと優しさが一気に広がってほわっと気持ちが和らいだ。
「嬉しかった?どうして」
垂れてくる横髪の一束を掬って耳にかけて照美もスープを一口食べた。その仕草が本当に絵になるなあとみとれてしまう。
「ーー冷たい夜に君がいる家に帰ってこれた。一緒に温かいスープを食べられた。幸せだなあって……照美くん好きだなあって」
少し耳を赤くしながらいうと、照美はこちらこそ幸せだよと微笑んだ。



20210225




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