待ってろよ【吹雪兄弟】



※アレス軸の吹雪兄弟です。




部屋には段ボールがいくつも積み上げられていた。
「狭い……」
アツヤは避けて二段ベッドの上へ上っていく。下をみればかなりの荷物が段ボールの中に入ったのだろう。
春にはアニキがこの部屋を出ていく。どこの学校に進むのか最後まで悩んだらしいが、結局は東京の学校への進学が決まった。
最初は家から通える学校でいいとアニキは言っていたが、もっとサッカーを上手くなりたいと思っていることを家族は全員知っていた。
「春にはこの部屋が広く使えてるよ。だからそれまで我慢してね」
とアニキが部屋へと戻ってきた。今日は同じ3年同士で遊ぶと言っていたが帰りが早い。
「ハッ、きいていたのかよ……別に広く使いたいわけじゃない」
「ーーそう。あ、お母さんが下で張り切っていたよーアツヤの好きなもの沢山作るんだって」
「ふーん……というかアニキなんでこんな早く帰ってきたわけ?卒業したらすぐあっちへ行くんだから夜遅くまで遊ぶのかと」
「いや、今日はそういうわけにはいかないでしょ。アツヤの誕生日なんだから」
よいしょといいながら、アニキは二段ベッドの階段を上ってきた。そのままベッドに入ってきたのでベッドの上で胡座をかいていたオレは慌てて枕へと移動する。
「アニキ!狭いし、なんで上がってきた!?」
「あはは、まあまあ。久々にここにきたなあ」
と部屋の中を見下ろした。
「別にそんな変わりないだろ」
「変わりあるよ、これからはきっとこの部屋はもっとアツヤの色になる。オレのベッドの場所も好きに使ったらいいよ」
なんでそんな悲しいことをいうのだろうか。そんな寂しそうな顔で。
アツヤはブンブンと首を振った。
「ーーそんなこと、しない」
「アツヤ?」
「アニキ!待ってろよ!オレだって同じ学校にーー!ッいって!」
いきなり立ち上がって、天井に思いっきり頭をぶつけた。ここが二段ベッドの上だったことを忘れていた。
「アツヤ!?大丈夫!?」
「ーーッ!大丈夫だ!だからアニキも、東京にいっても寂しがるなよ。一年後、すぐに行くから」
頭を押さえて、チラッとみるとアニキはニッコリと笑っていた。
「アツヤこそ、寂しがるなよ。大丈夫だ、オレたちは兄弟だから」
そういってアニキはぶつけたところを優しく撫でた。
オレの方が先に泣きそうじゃんと言いかけて飲み込んだ。



20210222




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