走る音【風宮】




リズムよく走っていく音の方向に目を向けた。
「陸上部が校舎の周りを走っているみたいだな」
隣で一緒にストレッチをしていた豪炎寺が風丸の視線の先に気付いたのか声をかけてきた。
「ああ、そうみたいだな」
身体を伸ばしながら風丸は答えた。一瞬しかみていないが、宮坂は見かけなかった。別の場所を走っているのだろうか。
「懐かしいか、風丸」
「懐かしい……うーんそうだなあ……」
風丸はストレッチしていた動きを止めた。懐かしいというよりは。
「あいつらも頑張っているからオレもさらに頑張らなくちゃと思ってしまうな。負けてられないなと」
「フッ……そうか」
豪炎寺はそういって止めていた手を動かした。
きっとこういう気持ちになれたのは、宮坂のおかげだ。アイツが今も走っている。だからオレもこのフィールドで戦える。
タッタッと走る音が聞こえてきた。今度はそちらに目を向けずにストレッチに集中した。


20210217




prev next








×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -