足りない【照吹】



両想いになれば幸せなはずだと思っていた。
「好きだよ」
「僕も好きだ」
二人でそう言葉を交わして口づけをした。何度もデートをした。離れているから1回1回のデートが大切でその事は彼も分かっている。
ただなんとなくーーーー寂しいと感じる。満たされた想いにならずにもっと照美くんを感じたいと思っている。
至って健全なお付き合い。周りの目を気にしているのか手を繋ぐこともほぼないので、はたからみればただの友人同士だ。
君で沢山満たしてほしい。もう無理だと思うくらいに、君のことを心も身体もいっぱいにしたい。
 
「照美くん」
吹雪はテカテカと電灯を灯すホテルの前に立ち止まった。
「ねえ、どうして」
照美の服の袖を指で引っ張った。
「どうして、ダメなの」
「……行くよ、吹雪くん。こんなところで立ち止まったらいけない」
照美は吹雪の手を掴んで歩き出した。
教えてくれない彼の掴む手はいつもと違って痛かった。
幸せってなんだろうか。
吹雪は前を行く照美が刺さるほど眩しく感じた。



20210215




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