銀世界に揺れる【大人照吹】






二人での旅行に選んだのは北海道だった。
「晴れてよかったね」
白い息は太陽の暖かな光に照らされてキラキラと白い雪へと落ちていく。ホテルの裏手は広い高原があり、一面の銀世界が広がっている。吹雪はこれを照美と一緒にみたいからここを選んだと来るまでの移動で話していた。自分が生まれ住んだ土地であるが、北海道は広く、行きたい場所も多くあるのだという。
サクサクと除雪された道を通りながら、高原の真ん中にある大きな木を目指して歩いていく。
「照美くん」
「なんだい」
「……なんでもないや」
フフッと笑って吹雪は照美の手を繋いだ。手袋越しでも繋いでいるだけで心が暖かくなる気がする。隣を歩く吹雪は、鼻が少し赤くなっていた。
「綺麗な道だ。真っ白で眩しい道。目がチカチカになりそうな……君のようだ」
照美が詩を読むように抑揚をつけていうと、吹雪は手を離した。
「吹雪くん?」
「それは嘘でしょう?僕は眩しくはないよ、眩しいなら自ら輝ける君の方だ」
怒っているわけではない。ただ事実を述べているだけのようだった。そして、吹雪は息を大きく吸って、ゆっくりと吐き出す。
「照美くん、僕は君が好きだよ」
白い息と共に僕に向けられた温かい想いはしっかりと胸に届く。
「そうだね」
「そうだねって……はあ、やっぱり気持ちは変わらないか」
吹雪はガクッと肩を落として足元を見た。誰かがいると雪は白くても黒くなる。銀世界に響いた想いも温かな光によって溶けて見えなくなる。
きっと、きっときっと君は僕をずっと好きになってはくれないのだ。
「吹雪くん」
「なーに?」
項垂れていた顔をクイッとあげられた。顎を両手で支えられてキスが僕に溶けていく。
「僕もちゃあんと好きだよ」
揺れる熱い熱と、銀色の景色と、愛しい人の笑顔に僕はくらくらとしそうだった。



20210209




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