分からなくてもいいさ【藍良と天城兄弟】あん☆



何も仕事がなかった昼下がり、寮に戻る途中の公園にふと立ち寄ってみた。平日だったため人はまばらだったが、木の陰で綺麗な髪の色をした子がいる。ようと声をかけてみると、ビクッとその子は身体が跳ねて振り返った。
「あっれー弟くんの彼女と……弟くんか?寝ているのか?」
「彼女じゃないですって!何回言えば分かるんですか!……っと大きい声出したら目が覚めちゃうか」
自分の口を手で押さえている藍良を横目に燐音が覗きこむと、藍良の膝に一彩が頭を預けて寝ていた。
「……珍しいな。こいつがこうして寝ているの」
「珍しい?どういうことですか?」
藍良が誰だって眠ければ寝るだろうという顔をしている。いやいやそうじゃなくてと顔を横に振りながらしゃがんで一彩の寝顔を覗き込んだ。
「人前だとあまり無防備にならないように幼い頃に訓練してるから、こんな昼下がりの公園で誰かの膝枕で寝ているなんて出来ないはずなんだ」
「またどんな時代の話を……。ーーでもヒロくんならあり得そうですね。なら今はどうして寝ているんだろう?」
藍良は不思議そうにして、一彩の頬をそっと触っている。
分からないのか。すぐに分かりそうなものだがな。
燐音は一彩の顔に近付いた。
「一彩」
燐音が名前を呼ぶとパチッと目を開けた。燐音の顔をみて、目蓋を何度かパチパチする。
「あれ、兄さん?どうしてここに……」
一彩が起き上がって何も分かってないように頭を首をかしげた。
やれやれと燐音は答えずに立ち上がった。 
「藍良くんの膝が死にかけてたぞ。膝枕も大概にしろよな。あーと場所も選べよなーー」
その場を去りながら燐音は手を振った。
遠くからすまなかった!という声と困った声を出す会話に燐音は少し微笑んだ。



20210205





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