猫と君/可愛いから愛しい【大人基緑】



※付き合ってる!同棲してる!




「あれ、どうしたのそのゲージ」
おひさま園から戻ってきたヒロトは大きなゲージを手にしていた。夕方からヒロトもオレも早引きの予定が仕事の連絡で会社にいっており、おひさま園には一緒にはついていけなかった。確か狩屋から頼み事されたといっていたが、まさか。
「この猫を少しの間だけ預かってほしいんだって。狩屋が天馬くんたちと道端で拾ってしまったらしく……」
申し訳なさそうにしているところをみると、ヒロトは断れなかったんだろうなと予想がつく。二人ともあまり日中はいないし基本的に忙しい。
「姉さんもおひさま園だと難しいって?」
スマートフォンをいじりながらヒロトに一応きいてみた。
「うん。姉さんも小さい子どもたちみながらだから難しいって。狩屋は自分で世話をするっていっていたんだけど、狩屋が学校や部活の時は困るからなー」
ヒロトは子猫がはいったゲージを床に置いた。子猫はゲージの中ですやすやと眠っている。ヒロトはゲージの扉をゆっくり開けるとその音で目覚めたようで、震える足でそっとゲージから出ようとする。 
「……狩屋は放っておけなかったと言ってたよ。飼い猫だったみたいで捨てられた時は首輪もついていたんだって」
ヒロトはおいでと手を出して子猫を誘うがなかなかヒロトの方へ歩き出さない。オレはその様子を横目にようやく調べてたことが終わった。
「そっか……。あ、ヒロトみて。ここのサイトだと子猫の飼い方おか詳しく載ってるよ」
「さすが緑川!仕事が早いね」
些細なことでも褒められると嬉しいなと顔がほころんだ。すると、ニャアと鳴き声が足元からした。
「あれ、ヒロトじゃなくてオレの方へきたね」
オレはゆっくりとその場でしゃがみ、よしよしとそっと喉元をゴロゴロさせる。すると気持ち良さそうに子猫は目を細めた。
「狩屋はさ、重ねてしまったんだろうね。だから自分が引き取るっていったんだろうな」
「……そうだろうね。緑川、狩屋たちは子猫を飼いたい人を探すと言っていたけれど、もし見つからなかったときは……」
ヒロトの言いたいことはすぐ分かるよ。
オレは頷いた。
「いいよ、飼っても。但し、見つからなかったにしてよね。オレたちのところより幸せになれる場所があるならそっちの方がいいからさ」
「ありがとう」
ヒロトは緑川の頬にキスをすると、再びニャアニャアと鳴き声がした。
 



20210127






「緑川落ち込むなよ」
「落ち込んでない……」
といいながらも緑川の目の前には自分で注いだコーヒーがフチまでたっぷり入っている。可愛がっていた子猫は数日後、引き取り手が見つかった。つい昨日までは自分たちでも飼えるかもと話していたところだったので、余計に落ち込んでいるのだろう。
「でもあの人なら大丈夫だろうし、あの子猫も幸せになるよ。落ち込まないよ」
そっとカップのフチに唇の先をつけてコーヒーを飲んでいる。ヒロトはゴクリと唾を飲み込んだ。
子猫のことがあって最近そんなに触れあってない。ヒロトは仕事中は我慢しているので、家では思いっきり触れあいたい方だ。
我慢した分、今日はいいよね?とヒロトは手を緑川のお腹へと回した。
「ヒロト」
「は、はい?!」
ヒロトは声が裏返る。やっぱりそんな気分じゃないのかなとビクビクしてしまう。緑川に嫌われることは極力したくない。この関係がたまらなく好きだから壊したくないのだ。
「コーヒー飲んでて危ないからちょっと待って」
「はい……」
ズズッとすすると音と共に手で制止された。ヒロトはその場で触らずに待った。まだかなとそっと緑川越しにコーヒーのカップを覗こうとくるっと緑川がこちらをみた。
「ヒロト、本当に可愛いね。そんなにオレに構ってほしかった?」
クスクスと笑いながら緑川は続けた。
「子猫といるとね、みたことないヒロトの表情が見れて楽しかったんだ。子猫に嫉妬したり、可愛い声だしたり……」
緑川はヒロトの首に手を回して、立ったまま足を絡ませてくる。ドキドキした心臓の音は相手にも伝わっているだろうか。
「表情の変化なら緑川だってもっと可愛いよ。でも、オレにも構ってほしいのは本当」
ヒロトはゆっくりと唇に近付いていく。緑川はヒロトが口づけをする前に自分から唇を合わせた。
「ヒロトの可愛いところ、見られるとオレ嬉しいと同時に愛しくてたまらないんだ」
 
そういって、幸せにそうにはにかむ緑川をギュッと強く抱き締めて、ヒロトは沢山の愛しさをキスに込めた。



20210128




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