雨と雪【照美と吹雪】



冬の雨はひどく心に刺を刺す。まるで雨粒がつららのようにとがっているようだ。北海道では雪でも東京だと雨の日が多い。寒い日に雨とは早く温まりたいなとホテルへ帰る足を早くする。
「吹雪くん?」
名前を呼ばれて足を止めた。
「アフロディくんだ。こんなところでどうしたの」
「そっちこそどうしたんだい?遠征かなにかかな」
アフロディは白い傘を差して吹雪の隣を歩いた。薄暗い中でも彼の髪は光っているように亜麻色になびいている。灰色の風景には1つの灯火のようだった。僕は一瞬羨ましいと思いつつ、目をそらした。
「円堂くんに呼ばれてね……少しこっちで一緒に練習に混ざっているんだ」
吹雪が答えるとアフロディはふむと眉間にシワを寄せた。
「何故僕は呼ばれないんだろう?」
「……それは知らないよ。一緒に練習したかった?」
アフロディはぴたりと足を止めた。
「そうかもしれない。君がいるなら余計にね」
彼は傘を少し上げて僕の顔を覗く。顔が近い。僕は目をそらせなかった。いや、そらさなかった。
「本当にそう思っているの?」
吹雪がいうと、アフロディはフフッと笑った。そして一歩歩き出して、くるっと回転して身体を向ける。
「雨は君の雪とは違う。痛みは積もらないよ。だから暗い顔をせずに歩いてね」
また会おうとアフロディは手を振って去っていた。
「積もらないけれど、染みるよ」
吹雪は手を空へと向けると冷たい雨粒が手に落ちる。痛みに染みて疼く。もう治ったとばかり思っていたのにな。
吹雪はホテルへと足を再び歩み出した。


20210125




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