月よりも【天フェイ】






「未来の月も綺麗?」
窓の外に見える月夜を見つめながら天馬が言った。僕はにっこりして綺麗だよと答えた。
「けれどそれが今見ている月と同じとは言えないかもしれない」
天馬はどうしてと首をかしげる。僕は月へ手を伸ばしながら話を続けた。
「創られたものかもしれないだろう?200年後に同じ月はないかもしれない。正直なところ、本当のことは教えられないってこと」
そうなんだと天馬は残念そうに肩を落とした。同じ月だったらどんなによかったのだろうかと僕は思ってしまう。未来に帰っても同じ月があるだけでなんと心強かっただろう。伸ばしていた手は月を掴めないのだ。
天馬が僕の様子をみて、あっと声をあげて下がっていた手を両手で掴んだ。
「でもさ!でもさ!サッカーはちゃんとあるのは確かだよね!だって、フェイがここにいるんだもん!」
僕は薄明かりの中にある天馬の部屋のボールに目線がいく。それから天馬をみると、天馬はニッと笑うのだ。
「形が変わろうともサッカーはオレとフェイを繋いでくれた。月よりもきっときっと信じられるよ!サッカーは200年後もその先もずっと居てくれるよ!」
何も疑わずにキラキラとした瞳をこちらに向けてくれる。僕はやっぱりこの瞳が大好きだなと繋いでくれた手を握り返す。
「そうだね!」
笑いあう二人の声は月よりもその場にあったサッカーボールが覚えてくれるだろう。


20210120





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