先にはいない【吹雪兄弟】



※アレス軸です。


夢をみた。内容はぼんやりとして思い出せないけれど幸福な夢だ。幸せでいたいと僕は目覚めようとするのを断る。
「ダメだよ」
手を引くのは弟のアツヤだ。怖い顔をしている。
「オレがここを切り開くから、オマエはいくんだ」
「なんで?一人で?一緒には行けないの?」
僕がいうとアツヤは首を振った。
「オレはあとからいく。大丈夫だアニキ」
アツヤが笑い、ほらっと背中を押される。
僕が振り返ろうとすると身体の横をサッカーボールが飛んでいく。
「走れ!アニキ!」
僕は言われた通りに走り出したボールはどこまでも地面に落ちずに飛んでいく。走って、走って、何故だか涙がこぼれて気がつくと白い天井が見えた。

「アツヤ目が覚めた?おはよう」
二段ベッドの下で先に起きていた士郎がアツヤに声をかけた。アツヤはじっと手をみて開いたり閉じたりする。これは現実だ。
「アツヤ?」
士郎が降りてこないアツヤに不思議に思い、梯子を上ってきた。
「アニキ、泣いてないか?」
「え、泣いてないよ。どうしたの」
「…………そうだよな」
アツヤはグッと手を握りしめた。そして立ち上がってベッドの上にいることを忘れて頭をぶつけた。士郎がそれをみて笑い、アツヤも一緒に笑ったのだ。



20210119




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