魔法【トラシグ】ド!




 
トラシグとしての仕事は毎回久々だなと思ってしまう。今回は化粧品のCMだった。
それぞれ胸キュンな一言を考えるようにと事前に言われていた。
「純哉くんは考えてきた?」
「あったりまえだろ!今回はオレが一番胸キュンなセリフだぜ?」
純哉はフンと鼻を鳴らした。デビュー前の胸キュンな一言をいう番組での出来事のこと言ってるのだろう。奏はそっかーとさして気にしていない様子だ。
「あれ慎くんはなにしてるの?」
メイク室にあった化粧品を手にとって開けて中身をみたり匂いを嗅いでいる。
「ああ、今回のCM撮影で使う化粧品だなと思ってな」
「ほんとだ。メイクしてもらった時は気付かなかったけど、可愛いというより格好いい形してるんだね」
奏も手にとって開けた。キラキラパウダーが映えるアイメイクだと思っていたが、商品自体は女の子が持つからと可愛いものというわけではないようだ。
「てか、奏はちゃんと胸キュンな台詞考えてきたのか?」
「うーん、あ!今ひらめいた!」
「オイオイ……」
純哉がため息をついているとスタンバイお願いしますとスタッフから声がかけられた。
3人は今いきますーといって部屋を出ていく。
 
***
「CM好評だったな」
慎がトレーニングしている純哉に声をかけた。
「ん、ああ……」
純哉は喜んでいると思っていたが、そうでもなさそうな顔をしているので、慎はフッと笑った。
「慎、心を読むな」
「読んではいない。だが、きっとオレと同じ気持ちなんだろ。奏があんな台詞を言うなんて」
純哉はトレーニングを止めて壁へともたれ掛かった。
「慎も同じか。まあ、慎サマもなかなかな王子感あったけれどな」
にやにやと純哉は笑う。慎はそうだったがとトレーニング室にちょうど映ったCMに目を向けた。
「奏の成長に負けてられないと感じたな」

CMでは一言ずつキメ台詞を純哉、慎といい、最後に奏が映った。奏は人差し指で自分の目蓋を触れずになぞり、カメラへ向いた。
『これが魔法?君の魔法は素敵だね』


20210116





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