髪切った?似合ってる【ひいあい】あん☆



 
握手をしていてちょうどよく人が捌けて、隣から聞こえてくる一言に耳を疑って横を向いた。
言われた女の子はとても赤くなっており、お礼する言葉もカミカミだった。言った側の一彩は急にどうしたんだろうかと首をかしげており、分かってないのにいったの!?と内心驚きを隠せぬまま次のファンが握手を求めてきた。

***
「ひーーーろーーーくーーーん!」
握手会が終わって藍良は一彩を会場裏へ連れてきた。
「あれ?藍良なんで怒ってるの?」
何も分かってない様子にますます腹立たしくなった。
「どうせどっかで覚えてきたことなんだろうけど、むかつくーーー!」
「??」
一彩は訳が分からずハテナを浮かべるばかりだ。
「藍良分かるように説明してくれ」
「もう!今日握手会でファンの子に『髪切った?似合ってる』って言ったでしょ!そんなアイドルみたいなことをヒロくんがいうなんて、おれびっくりしちゃって……!」
と自分で説明するもののなんで自分はそれで怒っているんだろう?とはたと気付いた。一彩はまだよく分かってないようでどうしてという顔をしている。藍良は息をハアと吐いて、自分を落ち着けた。それからゆっくりと説明する。
「……そんなことを言われたらファンの子本当に嬉しかったと思う。前きてくれたこと覚えていてくれたって喜んだはずだよ。ヒロくんはただ事実を言っただけかもしれないけれど、そういうファンが喜びそうなことを言えるんだなって、逆にヒロくんはそういうことは出来ないと思っていた自分が恥ずかしかった」
そうだ。自分と同じアイドルとしてのレベルだと思っていたヒロくんが、ファンサービスでも一歩先を歩いていたのかと気付いて辛かった。自分の方が出来ていると慢心していたと。
一彩は泣きそうになって下を向く藍良の腕を掴んで引っ張り優しく抱き締めた。
「ひひひ、ヒロくん!?」
「藍良は僕がアイドルみたいなことをして嬉しくないのか」
抱き締めながら寂しそうに一彩は言った。
「それはちがうよ!嬉しいに決まってる!」
「……じゃあ恥ずかしいなんて思わないで欲しい。きっとアイドル好きの藍良の側にいたおかげで言えた言葉だったんだよ。藍良のおかげであの子は喜べた。ありがとう」
「ーーーーッ!」
なんでそういうこと素で言えるのか、本当に悔しいし羨ましい。
一彩が手を離すと藍良をみてプッと吹き出した。
「……なに」
「可愛いね藍良は」
そう言われて今度は藍良が真っ赤になる番だった。




20210112





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