悪い夢【ひいあい】あん☆



「藍良、元気ないな」
一彩はベタッと机に張り付く藍良の頭を撫でた。すると、ウーウーと藍良は唸った。
「ヒロくん……撫でなくていーの」
藍良は尚も姿勢を正さずに張り付いたままだった。
「こういう場合、僕はどうしたらよい?」
「えーそれ本人に訊く?少しは考えてよ」
藍良は膨れた顔を一彩に見せた。一彩はふむと右手を顎につけて考えた。どうして藍良は元気がないのか。いつからだったかをまず思い返した。昨日のレッスンもそんな素振りはなかったし、夜は好きなアイドルの歌番が始まるからとスキップをしていた。今日の朝は……元気がなかった気がする。寝不足なのかなと思ったが、学校へ一緒に向かう際もため息の数がいつもより多かった。
「藍良は、今日学校に来るのが嫌だったのか」
「えー……んーまあ数学の小テストがあるから嫌だけど、そうじゃなくて、今日みた夢が嫌な夢だったの」
「夢?」
「うん、なんかさーいきなり一人で舞台に立っていて、アルカロイドの先輩たちやヒロくんは客席にいてさ、ヒロくんは笑顔でおれに『ガンバレー!』なんていうからさ、もうおれ怖くなって逃げちゃった」
「………藍良」
藍良はうん?と顔を上げた。
「それは八つ当たりというものじゃないか」
「んーまーねー」
一彩は藍良の両頬を片手で摘まみ、藍良の口をアヒル口にさせた。
「ンッ!ンンッ!」
「………僕はまたなにかしてしまったのかと心配したんだ」
「ンンーーーー」
目尻が下がった藍良をみて一彩は可愛いと思って微笑んだ。
「ゴメン」
シュンとした藍良の頭をもう一度一彩は撫でた。 



20210104





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