悲観的な意味【蘭マサ】




チケットもらったからとセンパイに誘われてきた映画は、ロボットに恋する少年の映画だった。
 
「センパイが興味なさそうな映画でしたね」
「ん、ああ……」 
映画を観終わって、適当なカフェに入ってカフェモカを注文した。センパイはブラックコーヒーだ。なんとなく上の空になって、何もないところで転びそうになり狩屋が手を差し出したがコーヒーも溢さず大事には至らなかった。
どうしてこんなにも上の空なのだろう。思い当たるのは先程みた映画だ。興味もない映画のなににそんな引っ掛かっているのか。
「主演の俳優さん、クラスメイトが話題にするだけあって綺麗な人でしたねえ。相手のロボット役の方もイケメンで」
「そうだったな」
引っ掛かった点はここじゃないなと狩屋は話しながら、探していく。センパイはすぐに顔に出やすいから、ちょっとでも引っ掛かる点のキーワードが出れば分かるはずだ。
「あんなに綺麗な子がロボットに恋しちゃうだなんて可哀想ですよね」
狩屋がいいながらカフェモカを一口飲むと、センパイはみるみると表情が暗くなった。
「えっあっ?!ここ?!」
狩屋は動揺して、カフェモカを少しテーブルにこぼした。センパイはただそれをボーッとみている。いつもならすぐ怒る場面だ。
「センパイ?」
狩屋がセンパイの顔の前で手を振ると、バッとその手を取った。
「あ、れ……?」
「お前は可哀想か」
「は……い……?」
意味が分からないとクエスチョンマークを浮かべる狩屋をみて、センパイは手を離して我に返ったようだ。
「すまない、そのトイレ」
センパイは泣きそうな表情を浮かべて、飲みかけのブラックコーヒーをサッと片付けて店を出ていた。
「いやいや、そんなことされて、いや」
狩屋も追ってカフェモカをぐいっと飲んで追いかけた。

「霧野センパイ!」
路地裏に入ろうとするセンパイを見つけて、狩屋は叫んだ。
「狩屋」
ゼイゼイと息を荒くしながら狩屋はセンパイの手を取った。
「なにが可哀想なんですか」
狩屋が数センチだけ背が高いセンパイの顔を見上げた。目尻からは流れてなかったが、瞳は潤んでいた。
「お前がオレを好きなばっかりに」
「は?なにそーー」
「お前がオレを好きなばっかりに!実りある恋を逃してしまっていたらと思うと!お前が可哀想で……オレのせいだ」
流れた涙を確認する前にセンパイはオレの口をふさいだ。どうして辛い顔をしながらキスしてしまうのだろう。センパイのオレを求める唇にオレは可哀想じゃないと答えられるだろうか。
狩屋が気持ちのよいキスに足元が少し避けた。唇が離れた隙にセンパイの瞳をじっとみて狩屋はいった。
「好きだから仕方ないじゃないですか」



20210107





prev next








×
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -