何が嫌いか知ってる?【風宮】








今度どこか食べに行かないかと記録会のあとに連絡がきた。宮坂は今すぐがいいですと返信すると、いいのかと答えたあとに続けて分かったときた。
「まだかなー」
宮坂は大きなビジョンを眺めながら風丸を待った。
ビジョンでは報道番組を流しており、スポーツコーナーが始まった。
「あ、風丸さん」
プロサッカー界期待の新星として名前が出された。まだ高校生なのに、どこの所属になるのかと予想を立てられている。
こうしてみていると、本当に遠い人なんだと思ってしまう。見た目もイケメンで優しいので、同世代だけでなく他の世代の人気も高いそうだ。
僕が先に風丸さんを好きになったのに。
そんな気持ちが湧きながらも、でも僕なら隣を歩けるからと嫌な気持ちを打ち消している。
「宮坂、おまたせ」
トントンと肩を叩かれて振り返ると、帽子とサングラスを身につけた風丸が立っていた。
「ほーんと有名人って感じですね」
なにか変か?とキョトンとする風丸を宮坂はフフッと笑って、手を引っ張り走り出した。
「陸上を辞めたところが一番変ですよ!」
風丸は聞こえなかったようで聞き返したが宮坂はなんでもないと答えた。
目の前の信号が赤へと変わった。
「急に走るなよ」
普通だったら息を切らしそうな速さで走ったが風丸は全くその気がない。そういうところが好きで嫌いだなと宮坂は胸を締め付けられる。
「嫌なことあると走り出したくならないですか?」
「そうかー?」
風丸は納得してない様子だった。
分からなくてもいい。僕が何が嫌か、何が好きか。風丸さんが隣を走ってくれるなら。 
「今日は僕の新記録、沢山褒めてくださいね!」
宮坂がいうと、風丸はああと笑顔で頷いた。
目の前の信号が青になり、隣で歩き出した。


20210109





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