知らない世界【円←グラ】




 
「ヒロト!」
君が笑顔で駆け出していく先にはヒロトがいた。何もなかったかのように一緒にボールを追いかけていく。
「これがハッピーエンドだった」
オレがいなくても二人はサッカーをして友達になれた。そんな未来は想像しなくても分かっていた。
グランは黒いサッカーボールをゴールへと蹴り上げた。ボールは風を切って走り行く二人も抜き去ってゴールポストに吸い込まれていく。
君とヒロトは立ち止まってキョロキョロとして、それから二人は笑いあった。
「すごい風だったな!誰かがゴールへシュートしたみたいだった!」
君がいうとヒロトは、そうだね!と頷いた。と、ヒロトがちらりとこちらをみた。見えていないはずだが、しっかりと目を合わせた。グランはその確かな瞳に消されそうだと目をそらした。
もう一度みると、二人はまたボールを追いかけている。
「そんなわけがない」
オレが元から存在しない世界。父さんがオレの存在を望むことがなかった世界。君とオレは会えないが、君とヒロトは出会える世界。
「オレも君と一緒にサッカーしたかった」
そう望んだことがみせた幻の世界にさよならを告げて目を閉じた。
 
 
次に目を開けた先には、父さんの期待が大きく膨れ上がった自分が鏡に映っていたのだ。



20210105





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