救えないもの【照吹】




どうしてそんな顔を向けるのだろう。暗闇に包まれていく中で哀れむ顔を向けていくよくも知らない顔たち。
遠くでは、僕に聞こえるか聞こえないか位で大人が僕の行き先を決めていた。そんなに困った顔するなら大丈夫ですと言いたかったが、夢の中の自分はただ泣いているだけだった。

「目が覚めた?」
前髪を優しく撫でながら、僕に微笑んだのだアフロディくんだ。
「あれ、どうして……?」
「少し様子をみようかなと訪ねたら、君が唸っていたから」
僕は急にズキンと痛くなる足で思い出した。そっか、ここは病院かとどんどん記憶が明瞭になっていく。そういえば、今日アフロディくんが訪ねると連絡があったっけ。僕は起き上がり、ベッドの傍にある時計をみると約束の時間は過ぎていた。
「ごめん……」
「いいんだ、こちらこそお休みの時に来てしまって申し訳ない」
アフロディはこれお見舞いの花だよと白い小さな花が可愛く咲いてる花瓶を指差した。
「悪いけれど、勝手にお花替えさせてもらった」
「うんありがとう。綺麗で心が落ち着くよ」
僕がフーッと息を吐いて吸った。いい匂いが鼻をくすぐった。アフロディが良かったといいながら、僕の手を触った。
「吹雪くん。うなされてたみたいだったけれど、どんな夢をみたの」
心配そうな顔でアフロディは僕をみた。
「うーん、よくは覚えてないけれど昔の夢だった。息苦しさを感じた時の」
「そうなんだ……」
僕は心配しないでと明るく言い放った。
「今は元気だよ!怪我してるけれど!」
アフロディは触っていた僕の手を握った。
「昔の君も救ってやれたら良かったのにね」
「え?」
「ーーなんでもないよ」
アフロディは微笑むが、その笑顔はなんだか苦しそうに見えた。



20210106





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