約束したからね【奏純】ド!



師走はアイドルだって超忙しい。歌の特番やクリスマスとカウントダウンのライブ、その他諸々が1ヶ月の後半にどどんと増える。
「帰る頃には日付変わるなー」
奏と純哉はクリスマスの特番を終えて帰宅途中だった。時折見掛ける民家のイルミネーションに綺麗だなあとぼんやりと思っていた。
「こんなに忙しいと忘れそうになるよな」
純哉は横を歩いている奏の手をチラッとみる。今日くらいは繋ぎたい気もするが、奏ととある約束していた。
「うー今日の夜は一段と寒いよねー」
奏は純哉の視線に気付いたようだがパッと話を切り替えた。いつもなら純哉の手をとって言い出しそうなことなのに、奏は自分の手を擦り合わせた。あくまでちゃんと約束を守るという。
「……そうだな、帰ったら鍋でもするか」
「ヤッターー!何鍋!何鍋!?」
「いや、奏はもう遅いんだし帰りな。ねーちゃんも寝てるだろうし一人鍋だよ」
「ええー……」
奏がしょぼんと分かりやすく落ち込んだ。犬のようで可愛いなと触れそうになるのを堪えた。約束をオレから違うわけにはいかない。オレがそうしたいと望んで約束を結んだのだから。
「今度しような、奏の好きな鍋作ってやるからよ」
「純哉くんーーーー!大好き!」
首を傾けて満面の笑顔で言われると、純哉もしんどい。オレだってオマエが好きだ。言ったら奏が止まらなくなるから今は言わないけれど。
「約束、絶対守ってね。オレも頑張るから」
そういって奏は、分かれ道の前に立って小指を立てた。
純哉もその場で小指を立てる。
「ん、分かってる」
白い息が目の前を横切った。奏は小指の第一関節を軽く丸めてうんと小さくうなずいた。
「……じゃあまた明日仕事で!」
タタッと軽い足取りで奏は左の道を走っていった。今日も疲れる仕事だったはずなのに、体力は本当にある奴だ。
「……オレも頑張ろう。あと少し」

冬の冷たい空気をゆっくり肺に入れて深呼吸する。
《お正月の休みまでプライベートでお触り禁止。出来たら、奏が好きなだけオレに触れてよし。守れなかったら、お正月の休みは一緒に過ごさない》
ベタベタが加速していた奏を止めるための苦肉の策だったが、予想以上に自分も結構しんどいとは思わなかったな。
純哉はそう思いながら右へと歩いていった。



20201226




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