プレゼント【基緑】



「お疲れ様」
ヒロトを甘い匂いがふわっと包んだ。目の前にコトリと置かれたのは、白いマグカップに注がれたココアだった。ココアの上には赤と緑の柔らかそうな小さな四角いものが浮いている。
「緑川、これは……」
「マシュマロだよ、クリスマス会のお菓子の余りものだけど。ゆっくり溶かして食べなよ」
緑川はヒロトの前に座って、ヒロトにスプーンを渡した。ヒロトは受け取って言われた通りにかき回してマシュマロを溶かしていく。
「ヒロトももっと子どもらしくさ、クリスマスを楽しめばいいのにすぐあれこれしちゃうんだから」
緑川は顎を片手で支えながらぐるぐると回るマシュマロを眺めている。
「子どもらしく、か……。みんなが楽しそうにしていればオレも楽しいから、いろいろしちゃうんだけど」
「気持ちは分かるよーーけど、オレには大変そうにみえた」
「そうか……」
半分くらい溶けきったので、一口ごくりとココアを飲んだ。甘く温かいものが肩をストンと落とした。
「美味しいよ、ありがとう緑川」
「どういたしまして。そのココア、練って作ったからねー!ヒロトが少しでも休まるようにって」
「フフッ……緑川はすごいな、すごくホッとしたよ」
「あ、少し馬鹿にした?」
コツンとマグカップを指で弾かれた。可愛いとポロッと言いたくなってしまうが、グッと堪える。自分が緑川を思う気持ちにはまだ気付いてほしくないが、口の中の甘さをわけて分からせたくなる。
「いや全然。オレも緑川を見習うよ」
ゴクゴクとココアを飲んでいく。特上の甘さを目の前にして、マシュマロでさらに甘くなったココアは甘すぎることはなかった。




20201224




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