見えない



駅から少し離れたお寺で一回忌をやると言われて、ハアとため息が出た。始まるまでは1時間、待ちくたびれてしまうなあと電車の中で思った。あまり会ったことのない父方の祖父が昨年亡くなった。父方といっても私が14の時に母が再婚した相手の祖父であり、人に好かれるような性格をしていなかった私はいつも挨拶して会話が終わる。祖父の家は大きな広い家だが妙にひやりとする家だなという印象があった。特に使われていない奥の部屋はあまり行きたくなかった。私は、祖父の家にいるときは大抵茶の間にあるこたつで祖父と過ごした。ずっとつけっぱなしのテレビをBGMに、私はボーッとしていた。それくらいの思い出しかない。
「さーて、どうしようかな」
無人の駅で降りて、切符入れに切符を入れる。
「君ならどうするの?」
私は振り向いて小さな男の子に声をかけた。その小さな男の子は足がうっすら透けている。悪い子ではなさそうだが、ここにくると必ず私についてくる野球帽の男の子だ。
彼はにこにこと笑ってゆっくりと歩き出した。
「あーお寺と少し違う離れた方に行くのか」
私はついていくことにした。どうせあと1時間もある。少し離れても平気だろう。
どこへ向かうのだろうか。
私は白い道を歩いていく。今日は寒かったから雪も積もったんだなあと踏みしめていく。彼はゆっくりと進む。
何もない白い道はどこに繋がるのか。
 
「寂しいな」
雪は肩に積もる。払うこともせずに私は一人進む。



20201214




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