ちょっぴりの【レンアサ】VG



自分の誕生日より好きな人の誕生日の当日はドキドキしてしまう。誰よりも1番におめでとうがいいたしプレゼントも渡したい。出来れば、その日を迎える瞬間は、 一緒に居たいけれどそれが叶わないのならせめて。
「レン様、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとうアーちゃん」
 カチッと時計の針が動いた瞬間にすかさず言った。誰にも邪魔されたくないから、日付が変わる3分前から電話を繋いだ。これなら日付が変わった瞬間に電話している状態なので一番乗りだ。
「アーちゃん、本当にこれでよかったの?」
「はい!願いを叶えてくださってありがとうございます!」
アサカは電話越しに思いっきりお辞儀をした。自分の6月の誕生日に、なにがほしい?と訊かれて悩み抜いた末に《レン様の誕生日になる3分前を私にほしい》とお願いしたのだ。レン様のどんな一番も欲しい。そんな欲のかたまりを叶えてくれて本当に嬉しかった。アサカの口元はずっと緩みっぱなしだった。
「あ、他の人からなんか連絡きてるからそろそろ切るね」
レンはあっさりと電話を切ろうとした。アサカは名残惜しかったが、仕方ない。レンは沢山の人と繋がりがある。
「はい、分かりました……電話ありがとうございました」
ついつい、しょんぼりとした声で返答してしまう。ああもっとスマートに返せたらと思いつつも、そんなすぐにスイッチを切り替えれない。
「……あとさ、今度こういうことするときは電話より会って話した方がボクはいいと思う」
レンがぽつりと呟いたことに、アサカは突然頭からぴしゃんと大きな雨粒が当たった気になった。それはどういう……ときく前にじゃあねと電話を切られた。
「ハアーーーーーー」
アサカはずるずると足が崩れた。
(それってつまりは、来年は日付が変わる時に一緒にいてくれるってこと?でもそれって、それってーー)
「…………またレン様のこと好きになったわ……」
アサカは大きく息を吐いた。甘い恋のため息はいつか届く日がくるのだろうかとアサカは頬杖をついたのだった。



20201212




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