素敵なこと【藍良と英智】あん☆



「藍良くんは、握手会とかどんなことを考えているの」
同室になった英智がふと訊いてきた。藍良にとっては未だこんなすごいアイドルと同室なんて心穏やかにはなれそうにもなく、急に美しい顔で訊かれてドキリとした。
「突然ど、どうしたんですか?英智先輩」
「そこに積み重なってるよね、EdenのCD」
再びドキリとした。可愛い布で隠していたがバレていたのかと思うと、こんな気持ち悪いアイドルオタクがいるのが気になった?とかfineのファンのくせにEdenも推してるの?とか、藍良はグルグルと嫌な方向へと思考が急速に回っていく。その様子に英智が、「ああ違うよ」と笑って首を振った。
「君のことがどうとか、EdenのCDを積むなとかそういうのではなくてね、単純にファンは握手会に対してどう思っているかと。僕は身体が弱くてね、アイドルは好きなんだけどそういった“接近戦”のようなことに参加したことはなかったんだ。まあ、アイドル側としてはいくらでもあるんだけど」
そういえば、英智先輩もアイドルが本当に好きな人だと誰かから訊いたことがある。藍良はなんだか一気に親しみが出来た気がした。
「うーん、そのアイドルによって細かいところは違いますが、1番は間近でアイドルを見ることが出来ることですよね。自分だけが一瞬でもじっとみていられるというか」
「なるほど、でもライブでもそれは感じることが出来るよね」
「あ、そうですね……。えっと、あと、自分の思いを直接伝えられる機会ですかね。といっても、いつも言いたいことを沢山あったのに会った瞬間に飛んでしまったり、はっきりと言えなかったり……」
あははと乾いた笑い声が出た。藍良自身も何度も経験していることだ。
「そうなんだね、なるほどなあ」
と英智は手元にあった紅茶を一口飲んだ。
「おれの場合は、少しでも自分の思いを伝えたことでそのアイドルも笑顔になってほしいかなと思います。握手会っていつも力をくれるアイドルに感謝を伝えられる大事な場所だなあって……」
英智はニコニコと藍良を見つめている。藍良はビックリして目をそらした。オフの時でも美しいなと思った。
「ありがとう。とても参考になったよ。そんな風にキラキラとした目でアイドルのことを想ってくれる人がいると思うと、もっと頑張らなくっちゃ」
そう言われるとますます藍良は恥ずかしくなってウウーッと唸ったのだ。



20201211




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