真っ白黒【アレス吹雪兄弟】



幼い頃、朝日に真っ白に輝く雪をみて、弟のアツヤは走ってバフンと飛び込んだ。その光景が妙に怖くて、「にいちゃんもやろーよー」というアツヤの誘いに僕は後退りした。後ろには僕らを見守る両親がいる。穏やかそうに笑っているけれど、真っ白の雪を背景だと怖い。
 
「いなくならないで」
泣きたくなるような声でボソリと呟いた。自分だけにしか聞こえなかったかのようで、心配したアツヤは立ち上がって僕のそばにきていた。アツヤの手に触れた途端、僕は大きな声で泣いた。

ーーーーあの日のことが忘れられなかった。
どうしてそう思ったのか、泣いてしまったのか分からなかった。とにかく不安なのだ。真っ白の雪に罪はないのに真っ黒の恐怖が必ず側にいるんだと思ってしまう。
「アニキ!おーい!」
アツヤがグラウンドの遠くから呼んでいる。周りには一緒にサッカーをする仲間がいる。
 
ーーーー大丈夫、今度は離れないから。
「今行くよー!」
士郎は風のように駆けていく。士郎が駆けた後ろには真っ白な雪が舞った。







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