景色



最後に緑色の瞳を塗って完成した。
「お父さんみてみてー!」
私は父へとその絵を見せた。父は紙を手にとって、フーフーと息を吹き掛けた。そしてゆっくりと出来た絵に触る。
「よく描けてるね、素晴らしい」
私は父の足に手を置いて足をバタバタさせた。
私はこうして父に褒めてもらえることが好きだった。だから出来たら必ず一番最初に見せることにしている。
「えへへーお父さんありがとー!」
私がお礼をすると父は私の頭を優しく撫でた。


***

「お父さん、見えるかな」
私は渡す前に絵に息を吹き掛けた。いつの間にか癖がついてしまい、出来上がった絵には必ずそうしていた。
すると、風が吹いて線香の匂いがふあっと香ってきた。絵が飛ばされそうになったが離さなかった。
ずっと一緒に見せたかった景色を描いた絵を二人はきっと喜んでいるに違いない。
盲目の父にも、石の下に眠る父にも。
 

 

20201204




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